1.本研究の骨子は総論部分と各論部分から成る。2.総論とは民営化の背景や根拠、目的や方法、対象領域を中心とした考察であり、民営化政策のフレ-ムワ-クとして整理した。(1)聡論部分の研究から、民営化政策を経済政策の一つとして位置づけることの重要性が判明した。(2)現実には政治や利害者集団が民営化の運用にかなり大きな力を及ぼしている。(3)更に、民営化の対象となる産業や企業によって民営化の目標や手法が異なり、共通の指針を欠いているのが現状である。(4)今後は民営化を経済政策の中で評価し、資源配分効率性ならびに生産効率性を改善させる方向で実施しなければならないことを指摘した。3.各論部分は民営化政策のケ-ス・スタディであり、具体的には製造業、運輸業、公益事業における民営化の動向を把握し、問題点の所在を明らかにした。(1)各論部分の研究からは民営化後の新しい規制の模索が大きな論点であることを明示した。(2)民営化により政府介入の撤廃が意図されたにもかかわらず、政府が依然として民営化企業に介入している事例が見られる。(3)そのような事例をサッチャリズムの限界とみなし鋭く批判し、とりわけ「黄金株」(Golden Share)を通じて、政府が民営化された企業に対して裁量的な権限を保持している点に批判の矛先を向けた。(4)「黄金株」には過去の産業政策における介入主義的発想が残存している点を鮮明にしたが、それが民営化政策の理念とは対立することを強調した。(5)今後は公益事業における規制方法の確立が議論の集点となるが、過去の介入主義に帰着するのではなく、競走促進を円滑に機能させることが不可欠である。(6)個別産業のケ-ス・スタディから、競争促進を指向する政策こそが効率性改善に有効であるという結論が導出できる。4.本研究の延長線に「EC統合と民営化の推移」や「規制緩和の日英比較」というテ-マを予定している。
|