オ-ストラリアのビッグ・ビジネスBHP(The Broken Hill Proprietary Limited)は、石油・鉱産物・金属を扱う世界でも最大級の総合資源会社の一つに数えられている。オ-ストラリア国内では、他の追随を許さぬ巨大企業である。 BHPが1885年NSWの極西の地ブロ-クン・ヒルで銀・鉛鉱山として創業してから100有余年、このような巨大企業になるまでには、大きな転換点となった画期をいくつか経験している。その最大の画期は、1915年の鉄鋼業への進出であった。 BHPは、鉄鋼業への進出を成功させることにより、既存の鉱石依存的な鉱山業の存立形態から、鉱山の命脈を越えた経営管理能力依存の存立形態への移行により、ゴ-イング・コンサ-ンへ脱皮した。この過程では、単に専門経営者の台頭が物語られているだけではなく、経営資源として経営管理能力あるいは経営管理技術が確立されてくる過程を示している。この変化を総称して経営近代化と名づければ、BHPの鉄鋼業への進出過程は、まさしく鉱業経営近代化の形成過程を示すものであり、オ-ストラリア鉱業経営史の画期をなすものである。 企業の営む事業は、いかなるものでも、環境との相互作用の中で淘汰を受け、将来を保証されるものは何もない。将来を支え、成長を支えるのは、変化を探し変化に対応し変化を利用して事業展開する企業家精神とその具体化を進める経営管理の技術である。BHP鉄鋼業転進のプロセスは、まさしくオ-ストラリアにおけるビッグ・ビジネスの到来を告げるものであった。
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