研究概要 |
3か年にわたる本研究の最終年にあたる本年度では,中野,山地,高須,および,関口が当初から個々に進めてきた研究の結果を持ち寄り相互に検討し合い,さらに,補充の研究を進めるために,何度か打ち合せ会をもった。 中野は,19世紀後半までの合衆国における中小の商人や企業の会計記録を検討しつつ,改めて伝統的な会計学説での主張を補強する資本主理論的会計解釈からの研究成果を提示した。他方,山地は,19世紀半ばから20世紀初頭にかけての巨大企業の会計情報公開を中心に,特に実際の会計デ-タを検索しながら,中野とは異なった巨視的観点からの会計情報公開分意義づけを行った。また,高須は,20世紀における連結財務諸表の意義について従来とは異なった解釈を提示した。それは少なくとも20世紀合衆国の巨大企業では,連結財務諸表は「連結」それ信体の意味をもつと同時に,「個別」財務諸表としての意味をより大きくもっていたことを史料的に実証した。なお,関口は,上記3名の史料の検索と収集に助力した。 3名の研究,特に中野と山地・高須の研究結果は,数度の議論でもそのままでは噛み合わず,かえってそのことが近代・現代のアメリカ会計の発展の特質を物語っているものと解釈することにした。いみじくも研究計画立案の段階で予測していたとおり,史料的にもアメリカ企業会計発展の階層性が確認できたのである。したがって,将来的には,従来のような単一的なアメリカ企業会計の発展を描く通説を再検討する必要があるという点で,各研究分担者の間で意見が一致した次第である。
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