主バンドルを配位空間にもつ古典力学の例として、SU(2)ケプラ-問題を定義し、その幾何学について研究した。微分幾何学においてよく知られたHopfバンドルSU(2)→S^7→S^4を少し拡張して、主バンドルSU(2)→R^8-{0}→R^5-{0}を考える。R^8-{0}の余接バンドルT^*(R^8-{0})を相空間として、この上に共形ケプラ-問題を定義する。構造群SU(2)の作用は、自然にT^*(R^8-{0})上のシンプレクティック作用に持ち上がる。これを利用して、簡約化相空間を構成すると、その上に共形ケプラ-問題の簡約化であるSU(2)ケプラ-問題が定義できる。この力学系は、SU(2)のリ-代数su(2)に値をとるパラメ-タをもつ。このパラメ-タが非零のとき、簡約化相空間は、T^*(R^5-{0})を底空間とし、S^2をファイバ-とするファイバ-空間である。S^2は、この力学系の内部自由度を表している。SU(2)ケプラ-問題は、T^*(R^5-{0})上のケプラ-問題の拡張になっていて、ハミルトン関数は、ケプラ-問題のものに遠心力のポテンシャルが加わったものであり、シンプレクティック形式には、R^5-{0}におけるYangの単極子場をあらわす項が含まれる。 この力学系の幾何学として、エネルギ-多様体の構造と、等エネルギ-軌道空間の構造を研究した。上記のパラメ-タが非負のときが興味深いので、その結果を記す。負のエネルギ-をもつSU(2)ケプラ-問題のエネルギ-多様体は、SU(2)の等質空間SU(4)/U(1)×SU(2)に微分同相である。また、負のエネルギ-をもつとき、SU(2)ケプラ-問題の軌道はすべて閉軌道であり、したがって、S^1の作用による商空間を構成することにより、等エネルギ-軌道空間が定義できる。それは、やはりSU(2)の等質空間であり、SU(4)/S(U(1)×U(1)×U(2))に微分同相である。すなわち、旗多様体となる。
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