研究概要 |
本研究の目的は,数理生態モデルがパ-システンスとなる条件を調べることである.新たに得られた主な知見は以下のとおりである.(以下の1,2は平成元年度,3,4は2年度,5以下は3年度の成果である.) 1.2種競争系を2つのサブシステム(パッチ)に分割し,パッチ間の生物の移動能力を調節することにより系全体をパ-システンスとすることができることが示された.(論文1) 2.2つのパッチがともにbistableである場合,生物の移動能力の調節により系をパ-システンスとするためには,2つのパッチが異なるパッチ内構造を持つ必要があることが1で明らかにされた.そのため系が2つのパッチで構成され,一方は2種競争系,他方は1種系であると仮定した.2種系がbistableであっても系全体をパ-システンスとすることが可能であることを示し,そのための条件を求めた.(論文2) 3.3種競争系は2種系では現れないheteroclinic cycleを持つ場合があり,このcycleの下極限は0であるのでパ-システンスではない.系を2つのパッチに分割し,一方はheteroclinic cycleを持つ3種競争系,他方は1種系(隠れ家)であると仮定した.系全体をパ-システンスとするための条件を求めた.(論文3) 4.3の課題は,最近話題になっている魚種交替現象(沿岸漁業の主役がマイワシ→サンマ→サバ→マイワシ…と交替すること)と関連している.特に系がパ-システンスな振動を持つ場合について,魚種交替現象との関連を検討した.(論文4,5) 5.競争種が全て隠れ家を持つ4パッチ系を考察した.特に,3種系が安定なheteroclinic cycleを持っていても,系全体がパ-システンスな振動を有するための条件をHopf分岐理論を用いて求めた.(論文6) 6.パ-システンスを拡張した概念であるパ-マネンスと大域的安定性について1の系を考察した.(論文13,14) 7.以上はパッチが競争系である場合であったが,共生系(論文7),補食者ー被食者系(論文9)についても系のパ-システンス条件を求めた. 8.パ-システントではない競争系をパ-システントとするための隠れ家の役割の考察(論文10,11,12).
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