極限定理の中で、大数の法則と重ね付け総和の収束性についての研究を行った。特に、大数の法則については1983年Puri&Ralescuにより、従来の独立な確率変数列(random variables)の拡張として、バナッハ空間における確率集合列(random sets)についての証明がなされた。一方、数人の研究者により、ファジィ性を伴う場合の確率変数(fuzzy random var-iables)についての大数の法則が証明されていたが、本研究では同法則はバナッハ空間値をとるファジィ確率集合列(fuzzy random sets)の場合にも成立する事を示した。この場合、ファジィ部分集合の集合としての空間を定義し、メトリックとしてはハウスドルフ・メトリックの一般化としての新しいメトリックを用いた。また、ファジィ確率集合列{〓k}はコンパクトであり、更に(1){〓k}の独立性(2){〓k}の緊密性(3)確率集合列||Xkα||^r(1【less than or equal】r【less than or equal】2)は積分可能な実関数におさえられている等の 大数の法則の他に、同仮定の下でその拡張として考えられる重み付き総和、Σ^^n__<k=1>a_<nk>〓kの収束性についても強法則を得ることができた。この場合の{a_<nk>}^<k=1>は定数の配列でToeplit数列である。 この様に、今回の研究の目的は達成され次のステップとして以下の状況が想定される。極限定理構築の際、最も一般的で良く用いられる仮定で上述の(1)、(2)に関連する独立性と同時分布の条件を緩やかなものにする。例えば、適当なσ-加法族を選ぶことにより、この加法族の条件下では{〓k}は独立であり、同時分布に従うとする。この時、{〓k}は交換可能(exchangeable)であると言う。こうした仮定は従来の独立・同時分布等のそれに比べるとより現実的であり、特にファジィ性を伴う極限定理が構築されればこの分野での大きな飛躍となる。
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