本研究においては、小助変数、白色雑音および平均相場相互作用を伴うリエナ-ル型振動子の無限系列が満たす極限方程式を扱い、長い時間経過での解の漸近挙動を調べた。そして、振動子の応答を2次元確率微分方程式の解として定式化し、そこに現れるずれ係数が持つ非線形的な増加度や拡散係数が持つ退化性が起こす困難な解析を確率論的手法で解決した。新たな知見等の成果は通常の理論を拡散した次の事柄である。 1.マッキ-ン型確率微分方程式の解の存在と一意性に関する従来の結果をリャプノフ関数の手法で拡張した定理を求め、かつ、1963年のハスミンスキ-による伊藤型確率微分方程式に対する平均法理論をマッキ-ン型確率微分方程式に対して証明した。このことからリエナ-ル型振動子が長い時間経過の後に従う極限周期軌道とも言うべき拡散過程を得ることが出来た。 2.ずれ係数が大きく、ランダム媒質の影響を受け、しかも退化した拡散行列を持つ伊藤型確率微分方程式の解に対する大偏差原理を証明した。これは1987年のベヅィデンフットによる定理を拡張するものであり、かつ、ランダム制動項やランダム復元力に支配されるリエナ-ル型振動子に対する小助変数に依存した精密な確率法則を示している。 3.大きな粘性を持つ液体中のブラウン粒子の運動に由来するところの大助変数を伴うリエナ-ル型振動子の応答を、2次元確率微分方程式の解としての数学的に厳密に定式化し、大助変数が限りなく大きくなっていくときの漸近挙動を支配する確率法則を導くことが出来た。 これらの結果に基づいて今後展開され得る研究方向としては、拡散過程の系列に対する弱収束性のより一般的判定基準の設定、非ポテンシャル場の定常分布の分岐判定、スモルチョフスキ-・クラマ-ズの近似方程式の意味づけ等がある。また種々の計算機実験は研究に役立った。
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