研究概要 |
本研究によって以下の結果を得た。 (1) 自転の効果によって高速自転星の中に励起されることが予想される低い振動数を持つ振動が起こす星の表面での速度場および温度変動によって引き起こされるスペクトル線輪郭変動を計算し,早期型主系列星に観測されているスペクトル線輪郭変動との定性的一致を得た。このことにより,理論的にその発生が予想される振動が実際の星で起こっていることがかなり明らかとなった。 (2) 自転する星に励起されることが数値計算によってたしかめられている低周波振動の励起機構を振動のエネルギ-という観点から考察した。その結果,自転する星の対流層には負のエネルギ-を持つ振動が存在し,それが通常の正のエネルギ-を持つ振動と共鳴を起こすと,エネルギ-が負のエネルギ-をもつ振動から正のエネルギ-を持つ振動へと流れ、全体としては断熱的であっても,振動の振幅が増大すると理解できることが明らかになった。 (3) 上記の振動と同様のメカニズムによって励起される振動が木星の外層でも励起されることが可能であることを示し,この振動が最近木星に観測された非常に周期の長い振動に対応するものであることを提唱した。 (4) 自転する星で非軸対称的な振動が起きると星の中の物質のもつ角運動量の輸送が起きる。このメカニズムによって星の内部から表面へと角運動量が輸送されると,星の赤道表面近くにある物質が強い遠心力によって放出され,星の周りの赤道面にガス円盤ができる。このような質量放出円盤の構造を星からの轄射の効果を考慮にいれて計算し,B型輝線星に周りに存在する円盤の性質との比較を行った。
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