研究概要 |
本研究の目的は、入射エネルギ-〜40MeV領域において、荷電交換反応と云われる(p,n)反応の逆反応の(n,p)反応の研究を行い、核反応の研究に耐えうる単色中性子ビ-ムの開発をすすめると共に、核内核子のふるまいを明かにし、スピン・アイソスピンの変換に伴う新しい原子核の励起様式を明かにすることにあった。また、中性子ビ-ムという二次ビ-ムを使う実験でもあり極めて多いバックグラウンドのなかでのレア・イベントになるため、陽子の検出にも磁気分析器などの特別の装置が必要であり、デ-タ取り込みなどのソフトウェア-も含めこれらのシステムの開発も目的の一つであった。 研究の経過については以下の通りである。まず、中性子生成タ-ゲット(^<6,7>Li)を購入し、本センタ-に既設の中性子飛行時間分析装置を使いエネルギ-分解能700keV以下の単色性をもつ中性ビ-ムの発生を確認し、ビ-ムストッパ-、中性子コリメ-タの設計・製作を行った。この段階で、システムチェックを兼ね、核子・核間相互作用を研究する目的をもって^<28>Siをタ-ゲットにした中性子散乱の実験を本研究の一環として行った。ここでは弾性散乱のみならず非弾性散乱の測定ができて、非弾性散乱のデ-タの解析から原子核の芯偏極の効果を描出することに成功した。引き続き荷電粒子分析用の磁気分析器と、粒子弁別、位置検出用の検出器の整備を行い初期の成果を得た。ソフトウェアも含めこれらの全システムが整備され、(n,p)反応の研究に取り掛かった。最終的な目的は、(n,p)反応の可能性をしらべるとともに^<12>C(n,p)^<12>Bや^<26>Mg(n,p)^<26>Na反応の研究を行うことにあり、^<12>C(n,p)^<12>B反応については現在デ-タの解析中であるが、後者まで進むことが出来なかった。この研究を通じ、高速中性子誘導核反応の実験装置が完成し、研究成果として公表され、また中性子散乱の研究は国際会議で発表するなどしたが、今後この装置が大いに活用されるものと思われる。
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