研究概要 |
1989度の研究実績としては、SLC及びLEP IでのZーpole(√s=91 GeV:Z粒子)での実験にあわせて、標準Higgs粒子検出のために、レプトンのエネルギ-分布を求めたことに有る。シグナル(S)とバツクグランド(BG)の反応は、下記のものである。 (S):e^ー e^+→Z→l l^^ー H→l l^^ー b b^^ー jets,(1) (BG):e^ー e^+→Z,γ→f f^^ー→l l^^ー+q q^^ー jets+X.(2) ここで、l,b,qはそれぞれレプトン、ビュティ-クオ-ク、クオ-クを意味する。)我々はこれらの反応(1)と(2)に対して不変質量分布、共線角分布に加えて、今回エネルギ-分布を求めた。ZーpoleでのSとBGの比較から、無条件のevents("event selection"(選択則)を課さない)に対しては、Higgsの質量が、20 GeV<M_H<30 GeVのとき、Zーpoleではエネルギ-分布からHiggs粒子の検出が可能という事を示した。更に、BGのエネルギ-分布におけるスピン相関の効果が大きいことを見出した。このことは、BGのエネルギ-分布が、標準電弱理論の精密テストに使えること意味する。 1990年度には、前年度の研究を拡張する方向で次のことを求めた:一般的なレプトン対のエネルギ-分布の公式を用いることで、TRISTANエネルギ-(√s=60 GeV)での標準電弱理論の精密実験を提唱した。また、LEP II又は"JLC"(√s<300 GeV)でのレプトン対のエネルギ-分布のS/BG比を求める事が出来た。 1991年度は、LEP IIで重要な寄与をする次のバックグランド(BG2)の過程を計算した。 (BG2)e^ー e^+→V Z→V l l^^ー(V=Z,γ)(3) いろいろな物理的な考察を加えた後では、例えば、√s=2Mzでは、Higgs粒子の質量がM_H<85 GeVの場合、レプトンのエネルギ-分布dσ/dE_ーから、E_ー>70 GeVの領域でシグナルの検出が可能であることが結論された。
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