研究概要 |
ソフトフォノンが観測され典型的な変位型と考えられる強誘電体のなかに,規則・不規則型特有の誘電臨界緩和(critical slowingーdown)が観測されるものが見出されてきた。このような相転移を行なう典型的な強誘電体Li_2Ge_7O_<15>(以下LGOと略す)の相転移機構を解明するためにはソフトフォノンと緩和型モ-ドの両者を同時に観測することが重要である。ラマン散乱や誘電分散測定の結果から,10cm^<-1>以下の波数領域までのスペクトルが必要不可欠である。このため赤外フ-リエ分光計の改良を行なった。干渉計を振幅分割方式と偏光分割方式の複合型にすることにより,測定波数を遠赤外からミリ波領域まで拡張することが可能になった。この装置を用いて,LGOの赤外吸収スペクトルの温度依存性の詳細を測定した。常誘電相および強誘電相においてソフトフォノンが確認でき,この結果はラマン散乱等の結果とよい一致をみた。これまでの結果から,LGOの強誘電相転移にはフォノンと緩和型モ-ドのふたつの独立したモ-ドが関与していることが明らかになった。最近,低温で自発分極の符号が逆転することが見出された。これは結晶格子中に方向の異なる2種類の分極が存在していることを示し,ソフトフォノンのみでは説明できない。今後は,遠赤外からミリ波領域で高性能な検出器を導入し,ソフトフォノンと緩和型モ-ドを同時に測定し移乗の様子を直接観測したい。さらに,結晶構造の変化とこれらのモ-ドとの関係を定量的に解明したい。相転移機構の移行は限られた一部の強誘電体のみの問題ではなく本質的に一般的なものであると考えられるのでこのことを明らかにして行きたい。さらには,強誘電体の形態がバルク単結晶から単結晶薄膜そしてクラスタ-へと変わるとき,格子振動とりわけ相転移に関与するソフトフォノンがどの様になるかを観測し,相転移機構の移行を含む動力学を解明して行きたい。
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