研究概要 |
アルカリハライドにおける固有発光スペクトルの物質依存性の原因を探るため、混晶化に伴うスペクトル変化と寿命特性の変化を、真空紫外分光法、レ-ザ-パルスや軌道放射光パルスによる時間分解分光法によって追跡し、固有発光帯どうしの相互関係を明らかにした。試料としてKBr-KI,RbBr-RbI,NaBr-KBr,KBr-RbBr,KCl-RbCl等の混晶を広い組成比に亘って作成し、液体ヘリウム温度において緩和発光スペクトルや減衰時間を測定した。主要な結果としてKBr-KI混晶とRbBr-RbI混晶とで得られた知見をまとめると以下のようになる。 (1)KBrあるいはRbBr中に孤立した沃素イオン対(ダイマ-)に局在した緩和励起子は、単一の紫外発光帯を持ち、これには長寿命の三重項成分以外に短寿命の弱い一重項成分も共存している。この特徴は、先に我々が見いだしたNaIやNaBrの固有発光(π発光)の特徴と一致している。 (2)沃素イオン組成比の増加とともに三重項成分は大幅に減少し、ついには一重項成分のみとなって、これがKIあるいはRbIのσ発光となる。また、中間組成比で、三重項のみからなる発光が新たに3.5eV付近に出現し、これがKIのπ発光、RbIのEx発光につながってゆく。RbBr-RbI混晶では、沃素イオン組成比が〜0.85以上でさらに別の三重項発光が第三の発光として2.2eV付近に現れ、これがRbIのπ発光となる。 (3)これらの結果から、アルカリ沃化物の三重項発光には三つの異なる型のあることが結論される。他の混晶系での結果とも合わせると、アルカリハライドの緩和発光の始状態には、アルカリとハロゲンのイオンサイズ比に支配されて、三通りの異なる格子緩和配置が存在すると推定される。これらの配置の構造モデルとして、緩和励起子のオン・センタ-、弱いオフ・センタ-、及び強いオフ・センタ-の三つの変位を想定することが出来る。
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