研究概要 |
本研究では,スピンーパイエルス転移を引き起こしていると思われる新しい物質に着目し,主としてその磁気的性質を明らかにすることにより,スピンーパイエルス転移現象について理解を深める事を目的として平成元年度及び平成2年度の2ヶ年間に研究を行った.平成2年度(当該年度)は,研究成果の取りまとめる念願に置きつつ,平成元年度の研究計画を発展的に継続した. 1.《高純度,良質な錯塩結晶の作成》 新しいスピンーパイエルス類似物質と思われる2種類のシアニン色素ーTCNQ系錯塩,及びその他の類似錯塩の良質な結晶を作成した. 2.《スピン帯磁率の温度依存性の解析》 2種類の錯塩結晶のスピン帯磁率の温度依存性をファラデ-法によって詳細に測定し,これらのスピン帯磁率はスピンーパイエルス転移に類似の現象(低温域での帯磁率の急減少)を示すことを見出していたが,すでに知られているスピンーパイエルス物質に比べて転移温度が明瞭でないなど,その振舞いは少し異なる.高温域の帯磁率の温度依存性を,一次元磁性体等の理論と比較検討した. 3.《ESRによるスピンダイナミックスの解析》 単結晶のESRは,室温域でシャ-プな1本の吸収が観測され,その吸収幅が温度や外部磁場方向に大きく依存するなど,低次元磁性体の特徴を示すことを明らかにした. 4.《研究成果の公表》 研究成果の1部を取りまとめ,「磁気相転移」国際シンポジウムにて発表し,論文がJ.Mag.Materials Vol.90&91(1990)241ー243に掲載された.
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