研究概要 |
Ce金属をベ-スとする遷移金属との化合物について,その電子状態を光電子分光法と逆光電子分光法によって研究することを目的に研究費の配分を受けたCe化合物はf電子と伝導電子間の相互作用が物質によって異なり興味深い物性的問題を呈示している。占有準位に関する情報は光電子分光法などで可なり詳細に調べられているが,フェルミ準位近傍に関する研究は,装置のエネルギ-分解能の限界を越えていて実験的に極めて困難であることが明きらかになりつつある。にも拘わらず,この限界を超そうとする試みが最近数多く行われている。一方視点を変えて,非占有準位の研究からフェルミ準位近傍にアプロ-チしようとする実験が有力視されている。本研究ではこれらの測定法の複合化を計り,f電子状態の重要な情報をもたらすフェルミ準位直下の測定を試みようとするものである。 現有X線光電子分光装置の一部に逆光電子分光装置を組み込む計画で研究が出発した。この逆光電子分光装置の重要な部分はX線単色計と電子銃である。X線単色計は,明るい分光器が必要である。このために直径25mmφの水晶板を湾曲させ,これらを数枚,凹面に研磨された溶融石英板に貼り付れる構造を試みた。この分光器の設計値はAlKα線で700meVである。 次に,電子銃の設計に入った。電子銃の仕様は,(1)電子の加速エネルギ-が可変であること(10〜1500 eV),(2)試料面上での電子ビ-ムサイズを1〜2φにおさえる,(3)高輝度の電子線が得られること,の3点である。これらの仕様を満足させるため3極円筒レンズの組み合わせの電子銃の設計・開発を行った。電子の軌道計算のプログラムの開発が重要な課題であった。 また,これまでに多くの課題のあった単色計について設計指針を実現できる可能性がでできた。単色計と電子銃の超高真空槽へのドッツキングも間近であり,総合的に逆光電子分光装置の性能テストができることになる。これによって本格的にf電子系のフェルミ準位直下の状態密度の測定が実現できるものと期待している。
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