研究概要 |
希土類金属および希土類化合物の物性は、基本的に4f電子と伝導電子の相関によって決まると考えれらている。特にセリウム化合物では、4f電子は伝導電子との混成の度合いにより、局在性、価数揺動、遍歴性、あるいは重い電子系の形成と言ったさまざまな様相を示す。この研究は、CeNiをはじめ希土類(R)とニッケルの金属間化合物RNi系について、その電子状態を、直接ドハ-ス・ファンアルフェン効果と高磁場磁気抵抗効果により調べることを目的として始められた。引き上げ法と固相電解法により、高純度の化合物試料が作製され、現在までにLa,Ce,Pr,NdとNiとの化合物について、これらの測定が行われ、フェルミ面の様子が明らかにされた。 磁気抵抗の振舞いはLaNiとCeNiでは良く似ているが、PrNi,NdNiではこれと異なっている。磁気抵抗からは、この四物質とも電子とホ-ルの数が等しい補償された金属であり、またそのフェルミ面は、b軸方向に開いた軌道を持つことが解った。またLaNiおよびCeNiではc軸方向にも開いた軌道が存在するが、PrNi,NdNiでは存在しない。 つぎにLaNi,CeNi,NdNiのdHvA効果の測定を行った。主要フェルミ面からと思われる振動数ブランチの振動数は、三物質ともほとんど同じ値である。ただしCeNiではその有効質量がLaNiに比べて6〜10倍重くなっている。この結果はCeNiの電子比熱係数がLaNiより約10倍大きいことと対応し、f電子が伝導電子(5d,6s)と強い相互作用を持ち、エネルギ-バンド構造の形成に関わっている結果と考えられる。最近f電子を遍歴電子として扱ったCeNiのバンド計算が長谷川らによって行われたが、その結果はdHvA効果の実験結果を良く再現している。これらのことからCeNiのf電子は、遍歴電子となっていると判断される。PrNi,NdNiのフェルミ面のLaNiとの違いは、強磁性的エネルギ-バンドの分裂によるものと考えられる。
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