研究概要 |
負の誘電異方性をもつネマチック液晶に電圧を加えると,あるしきい値以上で空間的に規則正しい2次元ロ-ル状のパタ-ンが顕微鏡下で観測される。これはウイリアムズ・ドメインと呼ばれ一方向に配列した液晶構成分子が空間的に周期的な変化をした巨視的秩序構成造で非平衡系において現れる典型的な散逸構造である。平衡系の相転移現象である気相ー液相ー固相転移,強磁性,超伝導などでは系を特徴づける秩序パラメ-タの挙動がこれまで詳細に調べられ,巨視的変数である秩序パラメ-タの形成過程において変数の経路ゆらぎが異常に大きくなることが理論的にも実験的にも明らかにされてきた。しかしこれらは空間的には一様な系での秩序パラメ-タの挙動に関してであった。 本研究は非平衡系であり,かつ空間構造を持つウイリアムズ・ドメインという秩序構造の形成過程における経路の不安定性,パタ-ンの空間的ゆらぎ等明らかにすることを目的として,ウアリアムスドメインが現れるしきい値以下の電圧からしきい値以上の値を突然印加することによりパタ-ン形成過程における像強度変動のエネルギ-スペクトル,ロ-ル構造を反映する波数スペクトル,空間的不均一性を表わすフラットネス等の挙動を詳細に調べた。その結果次第に現われてくるロ-ル構造の波数スペクトルはロ-レンツ型を示しその構造を維持しつつ成長していくことが分かった。これらの挙動を液晶セルのサイズを幾つか変えて調べた結果波数スペクトルは形成過程においてサイズに依存せず,ウイリアムズドメイン形成はバルク的相互作用が本質的であることが明らかになった。また局所的空間ゆらぎを反映するフラットネスが形成過程の初期から中期において異常に増大することを見いだした。これは巨視的パタ-ン構造を反映する主モ-ドが局所ゆらぎのエネルギ-を引き込んで成長していくことを示している。
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