この研究計画が始まった89年頃、有限到達距離重力(いわゆる第5の力)の有力な証拠とみなされていた地球物理学的な方法による結果に、問題点があることが指摘され始めていた。そして90年になると、否定的な評価がほぼ固まった。91年6月に開かれたMG6(6th Marcel Grossman Meeting on General Relativity)では結局、第5の力の相対的な強さを表すパラメ-タ-αの上限値の形で、これまでの実験結果が整理された。すぐに実行できる実験計画も大体出尽した感があるが、一方理論的な模型の詳細な再検討により、αや到達距離の理論的予言値には何桁かの不定性が現状では避けられないことも明かとなった。しかも、理論的動機の一般性や自然さも再確認され、さらに精度を上げた実験の必要性は依然として高いといってよい。 こぅした状況で、研究計画の後半では、ふたつの方向について研究が行われた。 1.理論的模型のひとつに登場するスカラ-場の果たす役割を、さらに広い立場で調べた。特に宇宙定数問題との関連の注目した。これは現在の素粒子論と重力理論との結び付けようとする統一理論の中で、避けることのできない重要問題である。特にスカラ-場が、宇宙定数を時間的に「減衰」させる働きを持つことに焦点を絞った。詳細な検討の結果、この行き方が有望であることが非常にはっきりしてきた。特に宇宙の再加熱の問題にまで研究は進んだが、密度のゆらぎのついてはまだ未解決の問題がある。 2.有限到達距離重力の効果を探すさらに高精度の実験として、重力波検出を目的として開発されつつある超高感度レ-ザ-干渉計を利用する試みが検討された。一応の結論に達しているが、スペクトル線幅を極限的に狭くする技術を利用することがさらに有望と考えられており、それに関する理論的研究も進みつつある。
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