研究概要 |
分子の電子励起あるいは振動励起状態のなかには,基底状態からの直接吸収遷移が禁制であるためこれまで観測・解析されていないものが多い。これらの状態は他の状態との相互作用や振動の非調和項に基づいて僅かな遷移能率をもつので,半導体レ-ザ-を用いた高感度な分光計を製作しスペクトルの観測をおこなった。 1.HI分子のv=3,6状態の観測とeqQ値の決定(論文投稿予定) 分光計の感度を確かめる意味も兼ねて,まず2原子分子のHI分子の振動励起状態を検出した。特にv=6の状態への遷移は今回完成した長光路セルにより良いS/N比で信号を得ることができた。v=3←0および6←0のスペクトルの周波数測定から振動励起状態の分子定数を得ると共に、スペクトルの形の解析からそれぞれの状態の核四重極超微細構造の係数eqQの値を決定することができた。 2.PH_3分子の反転二重項の探索(日本物理学会にて講演済み) PH_3分子の7v_2振動励起状態とこの状態に特徴的な反転二重項を検出するために1.3μm帯の半導体レ-ザ-を光源としてスペクトル観測を行った。1000本近い数の豊富なスペクトルを得ることができ,この内には反転二重項を思わせるものもあるが,まだ最終的な判定を下す段階には至っていない。スペクトル線の周波数測定とシュタルク効果をもとにこのバンドおよびスペクトル線の同定を進めている。 3.HNOラジカルの3重項状態の検出 HNOの3重項状態(a^^〜^3A^<11>)を検出するために,分光装置にマイクロ波放電フロ-型セルを製作した。本研究計画のうちで最も感度を必要とするため,実験測定の時間的順序を上記1および2の研究の後に設定したが上記の研究に予定異常の日数を要したため,測定にかかる直前で年度期限を迎えた。
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