研究概要 |
地形の人工的な改変や崩壊・地すべり・土石流等による地表環境の変化は土砂の移動を通して下流部の湖沼にも影響を及ぼしている。本研究では,湖底などの堆積物の構造や粒度組成を適当な手法で分析・解析することにより,これまでの土壌の侵食を含むいわば土砂移動環境の変遷を復元できる可能性を明らかにするために、以下ことを行った。 対象地域は,明治以降の近代化過程において土地利用の活発化に伴う地表環境の変化に着目し,過程において土地開発や自然災害による土砂移動が著しい六甲山系とその周囲の地域の5個の湖沼である。そのうち二つは1938年の阪神大水害および1967年の7月豪雨災害時の最大雨量域付近にあり,他の三つは雨量が少なかった地域にある。雨量に少なかった地域にある湖沼の内一つは付近で最近地形改変が行われている湖沼である。5個の湖沼の堆積物を分析した結果以下のことが明らかになった。 1.六甲山系の湖沼堆積物には1967年7月豪雨災害時の痕跡が明暸ら認められた;堆積物の年代決定は^<137>Csを利用して行った結果,1967年頃の層序に明暸な粗粒化が認められた。一方,周辺部の湖沼堆積物からは顕著な変動は得られず,当時の豪雨特性を反映するものとなった。 2.粒度組成の変動や粒子密度の変動は周囲の環境,侵食環境の特性等を反映することが分かった。 3.付近に地形改変地の存在する湖沼でのボ-リングコア試料と堆積皿による堆積速度の比較から,改変による直接的な土砂の流入が無い場合には堆積量に顕著な影響を及ぼさないことが分かった。
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