研究概要 |
高知大学理学部付属の大気境堺層観測所(Atmospheric Boundaryーlayer Observatory,ABO)において,海風の進入(又は侵入)に伴って発生するウィンドシア-と,その乱流構造を研究した。使用した主な計測装置は,(1)超音波風速温度計(SAT)と(2)ドップラ-ソ-ダ(音波レ-ダ-)である。先ず,高度21mでの(1)の装置を用いた1989年までの観測から,海風の侵入時刻と前線幅が評価された。つまり,いずれも明瞭な季節変化を示し,侵入時刻についてはその実験式を示した。さらに乱流観測の結果に基づいて前線最下部での渦運動と渦の構造についての言及した。それには前線の侵入前後に見られた鉛直下降流と上昇流が影響しているように思われる。また海風の侵入に伴い接地気層で観測されたいくつかの乱流統計量の振る舞いに顕著な変化が見られた。 一方,(2)の装置でも(1)と同様に,1989年から1990年の約20ケ月にかて海風の侵入時刻を観測し,その実験式を求めた。なお(2)では,観測高度が60mと120mである。ソ-ダはSATに比較して探査高度が高く,海風の風速・風向デ-タから海風の立体的な構造を可視化することを試みた。また実際に,観測場であるABOにおいて,煙りの拡散実験を実施し,カメラ及びビデオによる撮影から海風前線で特有な渦の捕捉を試みたが決定的なものは得られなかった。 最後に海風前線で予測される急激なウィンドシア-については特に特徴的なものは得られなかった。しかし,その現象は乱流の非定常な問題の解明と関連して,将来もなお興味ある研究課題である。
|