研究概要 |
本研究の目的は、励起分子の動的過程を周波数領域スペクトルを基礎にして追究することにある。よく定義された励起初期状態を準備し、終状態の周波数領域スペクトルよりその時間発展を探ぐるものである。 上記目標に沿い、励起準位が相互にどのような相関を持つかを検討することを目指して分子を特定の回転振電準位へ励起し、そこから発する蛍光スペクトルを測定した。このスペクトル構造は、励起準位の振動固有関数を電子基底状態の振動固有関数に射影したものとなっている。本研究では、蛍光スペクトルに見られる電子基底状態の振動準位が基準振動によって帰属し得るかどうかを先ず検討し、次に、そのフ-リェ変換をとることによって時間領域のスペクトルによってその帰属を検討する方法をとった。 第一の研究例は、SO_2である。SO_2を電子励起C^〜状態の8つの振動準位を選択し、電子基底状態の4300〜21600cm^<-1>のエネルギ-範囲にある484個の振動準位が1388個のスペクトル線の測定から固定された。これらの振動準位は、SO_2の3つの基準振動の非調和展開はよく説明される。つまり、SO_2はSO結合の解離エネルギ-の約1/2のエネルギ-であってもその振動運動は基本的に準周期的である。ただし、誘導放出励起分光法による高分解能で準位構造を見ると基準振動に対する攝動構造が確認された。しかし、そのフ-リェ解析に耐え得る広範囲のスペクトル測定には至っていない。 第二の研究例は、アセチレンで、上記と同様の蛍光分光法によって、基底電子状態の5700-23400cm^<-1>のエネルギ-範囲の117個の振動準位を同定した。これらの準位は、3つの基準振動ν_2,ν_4,ν_5の非調和展開で説明できる。しかし、高分解分光によれば、各準位は10-40の準位に分裂しており、時間発展に相関がみられる。
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