研究概要 |
ミセル溶液やシクロデキストリン溶液などの微視的不均一系を用いれば、エネルギ-供与体と受容体の両方を同一ホスト内部に捕捉することや一方のみを選択的に捕捉することにより、三重項-三重項エネルギ-移動を制御(促進あるいは阻害)することが可能である。本研究では次の1〜4の実験を行ない、成果を得た。 1.陰イオン性及び陽イオン性ミセルをホストとし、フェナントレン及びそのカルボキシル基置換体をエネルギ-供与体、1,4-ジブロムナフタレンを受容体とする系について増感室温りん光スペクトルを測定し、その強度から三重項-三重項エネルギ-移動の効率を評価した。増感りん光の強度はエネルギ-移動効率の他に受容体のりん光量子収率によっても影響を受けるので、それに対するホストの効果も同時に測定し、エネルギ-移動効率を補正した。得られた結果をもとに、メタノ-ル溶液などの均一系に比べてエネルギ-移動が促進される系と阻害される系を分類した。 2.供与体及び受容体のけい光寿命測定及びけい光消光実験からそれらの分子のミセル溶液中での溶解サイトを推定した。この結果と前項1の結果の整合性を検討した。 3.α-、β、及びγ-シクロデキストリンをホストとし、ベンゾフェノン、アセトフェノン等の分子サイズの異なる芳香族化合物をエネルギ-供与体、1,4ージブロムナフタレンを受容体とする系について、前項1と同様に増感室温りん光スペクトル及び受容体のりん光量子収率を測定し、三重項-三重項エネルギ-移動におけるシクロデキストリンの空洞サイズと供与体・受容体の分子サイズとの適合性に関する知見を得た。 4.吸収スペクトルに対するBenesi-Hildebrandの取り扱いによって供与体あるいは受容体と各シクロデキストリンの包接錯体の安定度定数を求め、一連の系列におけるエネルギ-移動効率と安定度定数との相関を調べた。
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