研究概要 |
1.種々の配位子を持つアリ-ルパラジウム錯体とアルケニルスズ化合物との反応:Pd触媒を用いるスチリルスズのアリ-ル化脱スズ反応は、用いる試薬によって異なった経路で反応することを明らかにした。ArN_2BF_4を用いた場合、〔Ar-Pd〕^+BF_4^-が活性中間体と考えられるが、反応は二重結合へのAr-pDの付加と、Pd-Snの脱離によって進行する。一方、Ar-1を用いた場合中間体であるAr-Pd-Iとスチリルスズとのトランスメタル化反応によって進行している。Ph(Ph_3Sn)C=CH_2とAr-OTfとの反応では、興味あることに、Ar基の入った生成物は殆どなく、Ph-Pdを経由したと考えられる生成物を得た。これはAr-OTfのPd(0)への酸化的付加が困難であることを示している。そこで、種々の配位子を持つフェニルパラジウム錯体を系中で発生させ、スチリルスズ化合物と化学量論量で反応させて検討した。この場合でも、〔Ph-Pd〕^+BF_4^-の場合には付加脱離機構でフェニル化脱スズ反応生成物を与えるが、Ar-Pd-X(X=F,Cl,I,OAc)の場合にはトランスメタル化機構で反応が進行していることを明らかにした。しかし、強力な中性配位子であるPPh_3を配位子として持つ場合には(Ph-Pd(PPh_3)_2X:X=BF_4,F,Cl,I)そのアニオン性配位子によらず、いずれもトランスメタル化機構で反応していることを明らかにすることが出来た。この事は、Pdを触媒とする有機スズと有機求電子試薬とのカップリング反応を設計する上で重要な知見を与えるものである。 2.Pdを触媒とするスチリルゲルマンとArN_2BF_4の反応:表記反応を(E)-PhCH=CHGeMe_3、(Z)-PhCH=CHGeMe_3およびPh(Me_3Ge)C=CH_2を用いて検討したところ、いすれも(E)-PhCH=CHArを主とする生成物を与え、従来スチリルケイ素を用いた結果と全く同一であり、スチリルスズの反応とは異なっている。この事は、アルケニルゲルマンがそのスズ同族体よりも、ケイ素同族体に反応性が類似していることを示している。
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