研究概要 |
生体内でアキラルなポリエンが環化してキラルなテルペン類が生成していることはよく知られている。一方、実験室内でこの環化反応のキラリティを制御する研究もいくつか行われているが、まだ充分な成果が上がっていない。本研究は、キラルなアシルインミニウムイオンを中間体とするポリエン環化反応における立体制御の基礎的な知見を得ることを目的として行った。 キラルな補助剤として光学活性な酒石酸から誘導した(3R,4R)-ジベンジルオキソコハク酸イミドの窒素上にオレフィンを有する側鎖を導入した化合物について、NaBH_4還元后、ギ酸中で反応させることによって窒素を核間に有する5-6員環化合物に誘導し、この環化反応の立体化学は4位のベンジルオキシ基によって完全に支配されることを明らかにした。(Bull.Chem.Soc.Jpn発表、1990年1月号)次いで、(3R-4R)-ジベンジルオキシ-N-メチルコハク酸イミドを合成し、Grignard反応によって5位にオレフィン側鎖を導入した化合物を合成した。この化合物をギ酸処理したところ、一種類の炭素6員環を含むスピロ化合物が得られ、この場合には、3位のベンジルオキシ基によって立体化学が制御されていることを明らかにした。 他方、(S)-リンゴ酸から誘導した5-エトキシ-4-ヒバロキシ-N-メチル-2-ピロリジノンの水酸基上にオレフィン側鎖を導入した化合物の合成法を確立した。このものの環化条件の検討が今後の課題である。
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