研究概要 |
センダン科およびミカン科植物に含まれる生理活性リモノイドについて、昆虫の摂食阻害活性と苦味を指標にその単離と構造研究を行なった。研究対象とした植物は、センダン科のTrichilia roka、ミカン科の晩白柚、オオタチバナおよびミヤマシキミであった。順次その研究成果について報告する。 アフリカのセンダンTrichilia rokaの根皮には、ヨトウ虫に対する強い摂食阻害物質が含まれており、今までに活性物質として新化合物を含めて7つの化合物を報告しているが,今回新たに2つの新化合物を単離し、構造を明らかにした。一つは強い活性を有しておりtrichilin Bの7-アセチル体であり、他の一つは活性のないtrichilin Cの7-アセチル体であった。単離・精製はHPLCを用いて行ない、構造研究はスペクトル解析によった。興味あることに、これらの化合物は先に得ていた強い活性をもつ7-acetyltrichilin Aと共に、非極性溶媒中にてはそれぞれ単一に存在するが、水溶液にてはこれら三成分が平衡にあることが明らかとなった。このことが植物自身にあってどのような意味を持つのか非常に興味のあることである。 ミカン科のボンタン類に属する晩白柚の種子からは苦味成分として、limonin,obacunone,nomilin,deacetylnomilinが得られ、同じくオオタチバナの種子からはlimonin,obacunoneおよびdeacetylnomilinが得られ、nomilinを含まないことが明らかとなるとともに、新たに新物質と思われる微量成分のあることが伴った。この成分についてはその構造を現在検討中である。なおDCCを用いてリモノイド配糖体の単離をめざしたが、現在の所成功していない。一方、ミヤマシキミの葉からは一つの苦味リモノイドと二つのより小さい分子量を有するフラン化合物を単離しているが、それらの構造についても現在検討中である。
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