ペプチド抗生物質グラチシン(以下GR)の関連ペプチド、cyclo(-val-orm-Leu-DーD-phe-D-Tyr-Pro-)_2、cyclo(-val-Orm-Lew-Pro-D-phe-D-Phe-)_2とその類似体において申請者の発見した2つのコンホマ-について以下の研究を行った。 1)合成GR関連ペプチドをさらに5種類合成したが、コンホマ-の存在は確認できず、β-タ-ン部分にD-AA-D-AA-ProとPro-D-AA-D-AAアミノ酸配列をもつことがGRペプチドがコンホマ-をもつために重要であることを確認した。さらに今回、環の大きさの抗菌活性への寄与についての研究において新たにアミノ酸残基よりなるcyclo(-val-Leu-Orn-Leu-D-Phe-Pro-val-Orn-Leu-D-Phe-Pro-)がコンホマ-をもつことを示唆するデ-タを得たのでその強い抗菌力と合せ現在検討を行っている。2)HPLCによる各コンホマ-の単離を試みたが、O^<°C>以下でさえ単離した各コンホマ-は、時間とともに元の2つのコンホマ-にもどり単離できなかった。3)コンホマ-の存在を示したGR関連ペプチドのCDスペクトルを測定したが、その構成アミノ酸の違いにより種々のCDパタ-ンを示しコンホマ-の存在とCDスペクトルの間には相関関係は見出されなかった。このほかモデルジペプチドとしてPhe-ProとDーPheーProを合成しHPLCによる検討を行なったところPheーProはペプチド結合間のcis-trans互変異性によると考えられる2つのコンホマ-を示したが、D-Phe-Proではこのような現象は認められなかった。今までの研究からGRのコンホマ-もPro残基の前のペプチド結合のCis-trans互変異性によると推定しているが、今回行ったモデルペプチドの研究からそのコンホマ-を安定に維持するためにGRのD-AA-DーAAーProとPro-D-AA配列が重要な役割りをしていることがさらに確認できた。今後さらに関連ペプチドの合成、NMR等の研究を通してこの現象と活性との相関関係について検討を加えて行きたいと考えている。
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