研究概要 |
本研究の目的はメンブランフィルタ-を用いて水中の微量成分を濃縮して定量する方法の応用拡大を図ることである。先に報告した定量法を改善するとともに新しい定量法の開発ができたので,その成果を述べる。 1.シリカ(ケイ酸)の吸光光度定量:シリカはモリブデン酸とヘテロポリブル-陰イオンを生成する。これは陽イオン界面活性剤の共存下でイオン会合体を形成する。吸引濾過によりこの会合体をメンブランフィルタ-(MF)に捕集することができる。MFごと少量のDMFに溶解してブル-の吸光度を測定する。シリカのヘテロポリ酸は生成条件によってα型あるいはβ型のものができる。これまでβ型を生成させてシリカを定量していたが、鉄(II)の妨害が大きかった。今回,α型ができる条件で行ったところ,鉄(II)の影響を受けずに定量できた。この方法でμg/lレベルのシリカを定量するためには,汚染された試薬や水を予め蒸留で精製しなければならない。 本補助金で購入した非沸騰式酸蒸留装置で塩酸を精製したところ,汚染を1/5まで減少させることができた。 2.鉄の吸光光度定量:次のような新しい鉄(II)の定量法を開発した。μg/lレベルの鉄(II)をバソフェナントロリンジスルホン酸との錯陰イオンとした後,陽イオン界面活性剤を添加し,イオン会合体としてMFに捕集する。MFごと会合体をDMFに溶解して溶液の吸光度を測定する。この方法では,一度MFに捕集させた会合体を2週間後にDMFに溶解しても,捕集後直ちに溶解した場合と同じ吸光度を与える。採水現場で鉄(II)を固定して,後でゆっくり測定できるので実用上のメリットは大きい。 3.アルミニウムの原子吸光(AAS)定量:アルミニウムのクロムアズロ-ルS錯陰イオンを陽イオン界面活性剤の共存下でテフロン製のMFに捕集できた。捕集物をエタノ-ルに溶出しAASでμg/lのアルミニウムを定量できた。
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