研究概要 |
(1)竹富島沖の海底熱水域での試料採集と分析 ダイバ-が潜水して、サンゴ礁海底に噴出する熱水およびガスと周辺の堆積物を採集した。これらの試料の地球化学的研究より、この熱水は地下で海水と岩石が相互作用をして、組成変化していることがわかった。堆積物は現生のドロマイトを含む石灰岩であり、鉄、マンガン、ウラン、砒素、水銀、アンチモン、バリウムなどの重金属濃度が高い。これらの金属の異常濃集はおよそ500ー2000年位前の比較的最近におこなわれたと考えられる。炭素と酸素の同位体分析をおこなったが、竹富島沖のドロマイトは溶けやすく、通常のリン酸溶液によってカルサイトと分離溶解することができなかった。ガス分析の結果とあわせて検討すると、この海底温泉の熱源は火山活動もしくは熱水活動に起因する可能性がたかいといえる。 平成3年1月23日より、調査区域の西方40Km、深度数Kmの地点で群発地震が発生し、継続中である。竹富島海底温泉との距離が近いことから、今回の地震と海底温泉となんらかの関係が予想される。地下深所にかなり熱いものがあると予想されるので、今後、海底温泉と地震および海底火山との関係を明らかにすることが必要である。 (2)沖縄トラフ熱水域(伊是名、伊平屋海域)での試料採集と分析 潜水艇「しんかい2000」「なつしま」による調査に参加し、伊平屋海域で熱水噴出物(炭酸塩堆積物)を採集した。この地域では100℃以下の低温熱水であった。堆積物のX線回折から主要構成鉱物はカルサイトと菱マンガン鉱であった。また、中性子放射化分析により、これにはマンガン、砒素、水銀、銀などが含まれることがわかった(地球化学討論会1990,月刊地球1990で発表)。 伊是名海域の試料についてγ線スペクトル分析をおこなった。ウラン系列とトリウム系列のラジウムとその娘核種の放射能がきわめてつよい。しかし放射平衡には達しておらず、堆積物はおよそ10年から60年前かけて生成されたものと考えられる。また、昨年度に、海底より泡状の液体が湧出するのが観察されたが、これは二酸化炭素を主成分とするガスハイドレイトであった(Science 1990)。以上により、熱水活動の影響で生成される炭酸塩の化学的特性を明らかにできた。
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