研究概要 |
(1)2,6ジメチルピリジン(Me_2py)の二配位Cu^1錯体を合成し、その結晶構造を決定した。Cu(Me_2py)_2のCu-N距離は2つのMe_2pyのメチル間の距離が短くなると長くなることを明らかにした。この場合Cuの4s、4p3d軌道のエネルギ-が接近しているため二配位構造をとると結論した。 次に1,8ーナフチリジン(napy)を配位子とする二核の二配位Cu^1およびAg^1錯体を合成にも成功し、その結晶構造及び反応を明らかにした。〔Cu_2(napy)_2〕(ClO_4)_2、〔Ag_2(napy)_2〕(ClO_4)_2とも2つの金属が2つのnapyのN原子で架橋された八員環キレ-ト構造をとり、金属は2つのN原子が配位した二は配位し直線であった。最も注目される金属-金属間距離はCu・・・Cu距離が2.506(2)Åで金属銅のCu-Cu距離2.56Åより短く、またAg・・・Ag距離2.748Åも金属銀のAg-Ag距離2.88Åより短く、金属-金属相互作用の存在が示された。 近いCu-Cu距離を有する〔Cu_2(napy)_2〕(ClO_4)_2はエチレン、COなどと可逆的に結合し、特異的な構造をとることを見出した。たとえば、カルボニル錯体〔Cu_2(napy)_2(COl)(ClO_4)_2はμ(co)を1999cm^<-1>に与えCOはタ-ミナル型でなく、橋かけ配位しCOが活性化されている。 (2)低対称でしかも配位不飽和なY型三配位銅錯体〔Cu(phen)(CH_3CN)(ClO_4)(phen=1.10-フェナントロリン)を合成し、その結晶構造を決定した。銅のまわりの角度N-Cu-Nは82.9^0、137.7^0、139.0^0で1つの角度が異常に小さいことがわかる。またCu-N距離は1.852、2.01522.929Åで1つだけが短い。Y型及びT三型主配位銅錯体の角度と距離は極めて良い相関関係があり、Y型及びT型三配位銅錯体のような異常な低対称構造は結合距離の調整によって安定化することを初めて明らかにした。 (3)銅(I)ーオレフィン結合はα結合が支配的であり、dπーpπ逆供与は弱いことを^1HNMRおよびC=C結合距離より明らかにした。
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