研究概要 |
希土類元素(M)とタンパク質(牛血清アルブミン、BSA)、およびMとヌクレオチド(アデノシン三リン酸、ATP)との錯形成反応を調べた。錯形成平衡は、(ア)配位子、A(BSA,ATP)自身の吸光度変化、(イ)競合配位子、B(高感度呈色試薬、5ーBrーPAPS)とその錯体、MBの吸光度変化をそれぞれ測定する方法で解析した。購入した超純水製造装置は、試薬の精製、溶液調整等に使用した。1.錯形成解析法の比較:同一の系に(ア)、(イ)の手法を適用した結果、(イ)の手法でのみ錯形成が確認された。このことから、BSAあるいはATPのUV吸収を示す官能基が金属に配位する傾向は小さいと考えられる。(イ)の手法で得た結果を以下に示す。2.希土類ーBSA錯体:吸光度から得られた〔MB〕と〔B〕の値およびMBの生成定数を用いて〔M〕を求め、Scatchard plotを行って解析した。重希土(Yb,Er)では直線関係が得られ、一定の結合比(Yb:BSA=4:1)をもつこと、その安定度はYb>Erであり、pHの増加(6.4ー7.2)とともに増大することなどが判明した。一方、軽希土(Nd,Eu,Gd)では、直線は得られず、より不安定な錯体種の混在が確かめられた。初期の直線部を解析して求めた安定度は、元素種、pH(6.4ー7.2)、何れの変化に対しても顕著な差異を示さず、重希土との結合部位と比較して、明らかに性質の相違が認められた。3.希土類ーATP錯体:pH=7.2における1:1錯体の条件生成定数(K)を求めた結果、logKの値は6.5(Nd)から5.3(Yb)となり、原子番号の順に減少することが認められた。この結果は、速度論的手法(酵素阻害作用を利用)で得られた文献値(pH=8.0において6.5(La)から7.4(Lu))の増加傾向と異なっているので、今後さらにこの原因を究明したい。
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