研究概要 |
タバコ培養細胞BY2の定常期細胞を新鮮培地に移植すると,プロプラスチドDNAはすぐに複製を開始するが,核DNAの複製は少なくとも24時間は始まらない。この状態の細胞を ^3Hーチシジンでパルスラベルすると,プロプラスチドのDNAの複製中間体のみがラベルされる。この複製中間体を,BenzoylatedーnaphtoylatedーDEAEセルロ-スカラムを用いて分画した。ラベル時間が60分より短かいと,90%以上のカウントが一本鎖DNAを含む画分に回収される。これは,大部分の分子の複製が複製開始点を含む制限酵素片中にまだとどまっていることを示唆している。 この複製中間体画分をプロ-ブとして,タバコ葉緑体制限酵素断片に対してハイブリダイゼ-ションを行なった。その結果,Inverted Repeat由来の制限酵素断片に強くハイブリダイズし,複製開始点がInverted Repeat内に存在することが示唆された。更に,新鮮培地中での培養時間を変えることにより,プロプラスチドDNAの複製が両方向に進行することが示された。 より詳細な複製開始点のマッピングを行なうため,複製中間体分子上のDーloopを電子顕微鏡を用いて観察した。Dーloopを有する制限酵素断片の多くは,ハイブリダイゼ-ションで強いシグナルを示した場所,即ち,lnverted Repeat 内に由来したものであった。異なった制限酵素を用いた結果から,複製開始点は、Inverted Repeatの末端近く、23SrRNA遺伝子の近傍に存在すると考えられた。又,はInverted Repeatのそれぞれに存在する領域(同一塩基配列を有する)が2つとも、in vivoにおいて複製を開始していることが明らかになった。
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