| 研究概要 |
miniーFプラスミドの複製を阻害すると、宿主大腸菌の染色体分配と細胞分裂が阻害される。この共役にはF因子上の遺伝子letA、letDが必須で、これらの遺伝子を欠くプラスミドでは共役は見られない(Miki et al.,J.Mol.Biol.174,605(1984))。letd遺伝子は宿主大腸菌染色体の分配と細胞分裂を抑制する活性を、letA遺伝子はletp遺伝子産物の活性を抑え、分配と分裂を正常に行わせる活性を持つ(Miki et al.,J.Mol.Biol.174,627,(1984))。LetD蛋白質による染色体分配・細胞分裂抑制の分子機構を解析するため、LetD蛋白質(F因子letA(am)変異株)による増殖阻害を受けなくなった宿主変異株を分離し、遺伝解析したところ、gyrA(Miki et al.,J.Mol.Biol.201,327(1988))、groES、groEL、tdiC、tdiD(tdiC、tdiDは各々70.6分、96.0分に位置する新発見の遺伝子)の5遺伝子が関与することが明らかとなった。このうち、gyrA(Tdi)変異は野生型gyrA^+遺伝子に対し優性を示し、また、GyrA蛋白質を多量生産している細胞はF因子letA(am)変異による増殖阻害を抑圧した。この結果は、GyrA蛋白質(DNAジャイレ-スサブユニットA)が、LetD蛋白質の標的であることを強く示唆する。
実際に、LetD蛋白質を多量生産した細胞中でDNAジャイレ-スの活性が阻害されていることは、(1)プラスミドDNAのス-パ-コイル形成が強く阻害されていることと(2)細胞抽出液中に、ス-パ-コイルを導入する活性が失われていること、(3)細胞抽出液に精製したLetA蛋白質を添加すると負のス-パ-コイルを導入する活性が現れ、この活性はオキソリン酸により阻害されること、(4)部分精製した不活性型ス-パ-コイル導入活性はDNAジャイレ-スの抗体と反応すること、により示された。
F因子letA、letD遺伝子産物は、DNAジャイレ-スサブユニットAの活性を調節することにより宿主菌染色体分配・細胞分裂をF因子DNA複製に連関させているものと考えられる。
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