研究概要 |
硝酸還元酵素(NR)の生体内分解機構を解明するためには,先ずNRそれ自体の構造を知る必要があると考え,タンパク質化学的および分子生物学的手法を用いて検討した。その結果,ホウレンソウ緑葉NRは2つのサブユニットから成る酵素であり,そのサブユニット内に,各々FAD,ヘム,モリブデンを含む3つのドメイン構造が存在することを明らかにした。これら各ドメインの1次構造のホモロジ-は植物問で比較的高い。しかし,これらドメインとドメインの間を連結する領域のホモロジ-は低かった。しかし,FADドメインとヘムドメインの間には,Staphylococcus aureus V8プロテア-ゼによって切断される部位が,まヘムドメインとモリブデンドメインの間には,トリプシンで切断される部位が様々な植物のNRに広く保存されていることが明らかとなった。これは,NRの生体内でのタ-ンオ-バ-速度が速いことと何らかの関係があるものと推定された。 いっぽう,ホウレンソウ緑葉中には,プロテア-ゼ活性をもたないタンパク質性NR不活性化因子(NRI)の存在することが知られているが,その実体は不明であった。そこで今回,このNRIの単離精製を試みた。pH5処理,SE53クロマトグラフィ-,ConAセファロ-スクロマトグラフィ-,クロマトフォ-カシング,HPLCにより,ホウレンソウ緑葉粗抽出液からNRIを16,000倍にまで精製することに成功した。精製NRIは,分子量110,000の糖タンパク質であり,分子量53,000のサブユニット2個から構成されていることが判明した。またサブユニット間は,ジスフィド結合で結合していることも明らかとなった。このNIは,NRに結合するタンパク質ではないので,その不活性化機構は大変興味深いが残された課題である。
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