研究概要 |
トウモロコシの切断種子根の根出液が報告者らが提唱している理論模型アポプラスト・カナル模型(Katou & Furumoto 1986)によって理解可能であることは既に明らかにしている。(Taura,Iwaikawa,Furumoto & Katou 1988)、根においては、根表皮系の吸収カナル(吸水ポンプ)と中心柱の分泌カナル(排水ポンプ)のシンプラストを介した共役が特徴である(二重カナル模型)、植物の通常の生育環境下では、蒸散によって導管圧が変動し、乾燥及び塩類によって培地の浸透濃度が変わりやすい、この様な環境要因が根出液に及ぼす効果も二重カナル模型で説明可能かどうかを計算機解説により検討した。具体的には、根の生理学的構造をもとに初期値および境界条件を定め、カナル方程式の数値計算によって根液の出液速度及びその浸透濃度を導管圧の関数とし表し、トウモトコシ種子根について報告されている実験デ-タと比較解析した。その結果、二重カナル模型は根出液の導管圧感受性も極めてよく説明することが判った。今まで、この現象は現実に存在しない非理想反応側肢透膜を組織内に仮定しなくては説明できなかったが、二重カナル模型はこの理論的困難を克服した。二重カナル説をさらに検証する目的で、トウモロコシ根を用いた外液の浸透ストレスに対する根出液の反応を解析する実験装置を開発した。光センサ-を利用して出液量を自動記録し、その後で溢泌液を採取し分析にかけた。採取した溢泌液の浸透濃度は研究補助金で購入した浸透圧計を用いて測定し、イオン組成の分析は既存のイオン・クロマトフラフィ-によた。理論が予見していたように、(1)浸透ストレスに対する呼吸依存の適応回復が観測される。(2)吸収可能な溶質によるストレスは根出液の適応回復を促進する、ことなどが明らかとなった。今後は、カナル模型の実験的検証を更に進めると共に、根出液の時間変化をも表現できるように理論の一般化を図る。
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