研究概要 |
シラネアオイは日本固有の種で,はじめキンポウゲ科に入れられたが,果実,花葉の発生,染色体,化学成分などいろいろな点で異なることより独立した1種1属の科としてわけられた.この科はキンポウゲ目,ボタン目あるいはオトギリソウ目と類縁が示唆されているが,その分類学的位置はいまだ明かではない.近年,タンパク質の相同性をもとに系統関係を明らかにしようという試みが多くの生物で行われており,被子植物では種子タンパク質の免疫学的な類似度により属,科,目などの近縁度が示されている.種子タンパク質は安定で多量に含まれ,近縁な分類群間では高い類似性が認められていること,また免疫学的な方法により多くの植物を比較することが可能である.今回,シラネアオイ,キンポウゲ科のヤマオダマキとケシ科のヤマブキソウの11Sグロブリンスモ-ルポリペプチド抗体を作成し,またウエスタンブロティング法によりあらかじめ種々の植物においてこのタンパク質を同定し,一定のタンパク量に対する抗体反応量を測定することにより,定量的な解析を行った. 種子植物53科118種の種子貯蔵タンパク質の組成を調べた結果,シラネアオイなど101種が11Sグロブリングル-プのタンパク質を持つことがわかった.ヤマオダマキとヤマブキソウの抗体は属内および近縁な属間で高い値を示し,この方法は類縁関係を解明するのに有効と考えられた.シラネアオイの抗体を中心として他の2種の抗体での結果も考慮してシラネアオイの類縁を検討した.シラネアオイの抗体は,従来,類縁が示唆された植物,オトギリソウ目のもの,ヒドラスチス,ポドフイルムとの反応性は低く,キンポウゲ科の多くの植物やケシ科とは高い反応性を示し,これらの植物と近縁であることが推定された.
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