研究概要 |
1.クロサンショウウオの雄の生殖器官の周年変化を組織学的に観察した。繁殖期に水に入ると排精が起り,ウォルフ管に束状の精子が充満し,管壁の上皮細胞の分泌物によって精子は活性化される。繁殖期のあと温度の上昇と共に精巣小葉で減数分裂が始まり,夏には精子が形成される。精子変態がみられる頃からクロアカ腺の発達が始まる。精子形成の進行はすべての精巣小葉で同調的に進行する。 2.クロサンショウウオの雄は繁殖期に水に入ると著しい体型変化を起こす。これは皮下組織の膨潤によるもので,生殖活動が終ると陸生型に戻る。繁殖期に水に入る行動は従来プロラクチンの刺激によって起るといわれてきたが,これは支持できない。 3.一匹の雌が産む卵の大きさと数の関係は生息地が北である程,また標高が高い程大卵少産であった。大きい卵は発生が早く,これは冬の長い環境への適応と考えられる。変態後の個体は高地では成長が遅く成熟に達するのが遅く,また寿命が長い。卵黄総量(卵サイズ×卵数)は雌の体の大きさと比例している。 4.クロサンショウウオとエゾサンショウウオの幼生は低温で飼育すると成長をつづけるが変態は起らない。脳下垂体を免疫組織化学的に観察すると,生殖腺刺激ホルモン産生細胞の発達は変態しない個体ではほとんど起らず,従って,これらの種類では幼生を低温で飼育してもネオテニ-は起らないと考えられる。 5.クロサンショウウオの雌では産卵池に入ると排卵が起る。この時期の雌に生殖腺刺激ホルモンを注射して8℃におくと,18時間で排卵が起り,その14時間後には卵は卵管に入っている。子宮で卵嚢が形成されるのはホルモン注射後約50時間であった。雌の体重は卵嚢形成中に著しく増加する。
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