研究概要 |
メダカの生殖細胞の分化を、レクチン結合性から、従来より詳細に区別・整理することが可能になった。また、常染色体上の性決定関連遺伝子を確認した。今後、それがどの細胞で何をしているのかの検討が必要である。 レクチン結合性から、生殖細胞とその支持細胞の分化段階の区別を試みた。精原細胞・卵原細胞は、前者にBPAやSBAが結合することによって、また、セルトリ細胞と顆粒膜細胞はBPA,PNAの結合の強さの違いから、区別できた。即ち、レクチンの結合性で、形態的に区別できない生殖細胞と体細胞の性を知ることが可能になった。 始原生殖細胞、生殖細胞支持細胞のレクチン親和性の雌雄差が発生過程のいつ現れるかを検討した。成魚生殖巣構成細胞に結合したBPA,LCH,MPA,PNA,RCAーI,SBAの7種のレクチンを使い調べた結果、成魚の精原細胞とセルトリ細胞に結合したBPAは、孵化直後の生殖巣構成細胞には結合せず、精巣の組織構築が始まる全長7ー8mmの稚魚で初めて結合した。また、成魚精原細胞及び卵原細胞に欄められたSBA陽性細胞は雌では減数分裂が始まる孵化直後から見られたが、雄では、孵化直後には認められず、全長5ー6mm(孵化後30日)頃に出現した。以上から、雄では、細精管の組織構築形成時期とレクチン結合性の変化時期がおおよそ一致することから、BPAが前精原細胞から精原細胞への、また体腔上皮細胞からセルトリ細胞への分化のマ-カ-となり得る可能性があることが判明した。 メダカとハイナンメダカ(O.curvinots)の種間雑種の稔性の検討過程で、ハイナンメダカのY染色体上精巣決定遺伝子はメダカのものと若干異なること、また、ハイナンメダカのY染色体が存在しても、東韓メダカの性決定に関与する遺伝子の存在下では雄になれないことが判った。東韓メダカとdーrR系統(南日本集団)のF1及びN2個体とハイナンメダカの子供の性比から、その性決定関連遺伝子は常染色体上に複数あることが判明した。
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