研究概要 |
1)ハ-フグラ-ベンの性状:東北地方南部に多く、北に向って減少する。方向は北北西ー南南東〜北北東ー南南西で,幅は10kmとほぼ一定している。厚い粗粒堆積物によって埋積されている。断層は高角正断層である。日本海側のものは西に、太平洋側のものは東に傾動している。23〜14Maに活動し,特に20〜16Maに活発であった。 2)新たに調査したハ-フグラ-ベンの概要:集中的に研究した小国地域のものも,他のハ-フグラ-ベンとほとんど同一性状であった。阿仁町のものは現在研究続行中だが、,や特異であるらしい。 3)広域応力場:中〜後期中新世の応力場は現在と全く異っていて,北東からの弱い圧縮で,南南東への引張であった。この応力場は北方ほど早期に現在の応力場に転換した。また,この引張応力場は伊豆ー小笠原海溝がより東方にあって,フィリッピン海プレ-トの沈み込みによるものと考えられる。 4)ハ-フグラ-ベンの非対称発達:引張歪勾配の存在下で砂箱実験を行った結果,共役正断層の中,断層面が引張歪の大きい方向に傾くものが卓越的に形成され,その非対称度は歪勾配の大きさに強く依存することが分った。この結果を前期中新世の東北日本のハ-フグラ-ベンに適用すると,奥羽背脊山脈付近に引張歪最大輔があったことになる。 5)プレ-ト運動と島弧テクトニクス:プレ-ト収れん速度の法則を適用すると,伊豆ー小笠原海溝は30Maには現在より約500km東方にあって,その後西進してきたことが判る。また,古地磁気学的デ-タから,フィリッピン海プレ-トの北上速度は24〜12Maに大変遅かったことが分る。これらをもとにすると,日本列島のテクトニクスはフィリッピン海プレ-トによって規制されていて,ハ-フグラ-ベンの形成と日本海の拡大は,このプレ-トの北上速度が遅かった事に起因することが分る。
|