研究概要 |
庄川上流にあたる岐阜県大野郡荘川村西部に分布するジュラ紀後期〜白亜紀初期の手取層群は,下位より,九頭竜亜層群に属する牛丸・赤歩危・御手洗累層,石徹白亜層群に属する大谷山・大黒谷・アマゴ谷累層,赤岩亜層群の大倉・別山谷累層に区分される。層序区分の概要はこれまでの研究(前田,1952)を再確認したが,石徹白亜層群と赤岩亜層群との関係は整合と判断した。 礫組成を定量的に調べ,大谷山累層中に多量のチャ-ト礫が含まれることが明らかになった。この累層は砂岩組成でも他の層準とは差があり,後背地の相違が推定される。赤岩亜層群の礫岩は80〜90%以上オ-ソコ-タイト礫で占められており,礫径も他地域と比較して最も大きい。砂岩組成はアルコ-ス質のものがほとんどであるが,層準によって差がある。 堆積相と化石から,牛丸・赤歩危累層は奥深い河口,御手洗累層は三角州から内湾性の浅海にかけて,大谷山累層は大規模な三角州〜バリヤ-島,大黒谷累層は三角州〜バリヤ-島の陸側にできた湖沼,アマゴ谷累層は蛇行河川による沖積平野,大倉・別山谷累層は網状河川〜蛇行河川による沖積平野の堆積環境が推定される。予想よりも地層の露出が悪く,マルコフ解析を有効に使う点で不十分さが残った。 また,手取層群全域の26地点について系統的な礫組成と礫径・円磨度の調査を行った。荘川地域の結果とあわせると,手取層群の後背地は,花崗岩・片麻岩類を主体とするものの,中・古生界の影響の強い時期や大陸性のオ-ソコ-タイトが近辺に出現した時期があったことが推定される。このような後背地の変化は,ジュラ紀末から白亜紀初期の日本列島の変動に関係しており,変動の実態や中国大陸を含めた古地理を復元する上で重要な情報である。
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