研究概要 |
中央構造線(MTLと略称)に沿う和泉層群堆積盆(ISB)は典型的な横ずれ堆積盆として注目されている。本研究,発達し長さ300kmにもおよぶISBの形成機構および変形様式を明らかにすることを目的とした。この研究で明らかになった点及び試みた点を以下に述べる。 1.ISBの地域区分:MTL断層系・和泉層群(上部白亜系)分布図を作成し,両者の特徴から,ISBを5つのセグメント(A〜E域)に地域区分した。A域(四国西部)〜D域(和泉山脈)は和泉層群の分布が連続する地域である。しかし,これは複合して1つの堆積盆をなす可能性(作業仮説)もあり,和泉層群の形成年代の再検討を試みた。D域西部で77ー72MaのF.T.年代を得た。また,E域(五条以東)では微化石を分析し,Archaeodictyomitra等の放散虫化石を発見した。【発表予定】.2.ISBの形成構造:MTLの五条屈曲(奈良県五条市付近)より西域の構造図を作成し,MTLの横ずれ運動に伴う断層デュ-プレスク構造を明らかにした。ISBがMTLの屈曲部における横ずれデュ-プクレスの形成に起因するプルアパ-ト型堆積盆であることを論じた【Geology,v.18,p.392ー394,1990;構造地質,no.35,p.65ー70,1990】.さらに,プルアパ-ト型堆積盆について,その形成機構を論じた【構造地質,no.36,1991,印刷中】.3.ISBの変形様式:D域のタ-ビダイト相の和泉層群にみられる層面すべり起因する変形構造(非調和褶曲・ステップ状断層構造)を計測し,層理面に沿う剪断ひずみを試算し(γ=0.3ー1.4),層面すべりの鏡肌を走査型電子顕微鏡で観察し,地層の運動方向を明らかにした。地層の運動方向及び堆積中心の移動方向から上述のMTLデュ-プレクス構造の断層ブロックの傾動方向を推定した【地質学会関西支部報,no.109,p.7,1990;日本地質学会第97年会講演要旨,p.346,1990;投稿論文準備中】.
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