研究概要 |
平成元年度から2年度にかけて行われた本研究の主たる目的は西南日本内帯の白亜紀から新第三紀にかけての火成活動の時空的変遷を,大陸縁におけるリフト・システムの形成ー大陸地殻の分裂ー日本海の拡大ー島弧の形成というテクトニクスとの関連で検討することにあった。そのために中国・近畿地方・韓半島東部における白亜紀から第三紀に至る火成岩類,および東アフリカ大地溝帯とイエメン台地の新生代火山岩類について,地質学,紀載岩石学,KーAr年代とRbーSr年代測定,全岩主・微量成分分析,Sr・Nd同位体測定が行われた. その結果,以下に示す諸点が明らかとなった.(1)西南日本内帯と韓半島における火成活動は白亜紀ー前期古第三紀,後期古第三紀,前・中期中新世,中期中新世以降の活動に区分され,それぞれの間にはdrasticな組成的変化が認められる.(2)白亜紀における上部マントルと下部地殻は後期古第三紀と前・中期中新世のものに比べて,著しく多様性を持ったものであった.白亜紀の火成活動は海嶺の斜め沈み込みに起因するものと考えられる.(3)非アルカリ岩類では白亜紀から中新世にかけてincompatible elementsおよびSr・Nd同位体値はよりdepletedする傾向にある.(4)後期古第三紀にはド-ミングまたはリフティングが起こり,上部マントルと下部地殻物質の改変が始まり,すでにこの時期に日本海の拡大は先駆的に始まっている.(5)約29Maから21Maにかけて火成活動は微弱になるが,この期を境として上部マントルと下部地殻の改変が著しく進み,よりdepletedしたものへと変わった.この改変にはdepletedマントル・ダイアピルが関与しているものと考えられ,この時期が日本海拡大の最盛期にあたる.(6)山陰地方の14Maのアルカリ岩は沈み込みにスラブの影響を受けていると考えられ,この頃にはフィリピン海プレ-ト山陰帯の下にまで達したと推定される.山陰地域,韓半島東部の後期古第三紀ー前・中期中新世のソレアイトはいづれも島弧性格を有するものであり,MORB的なものは出現しない.このことはこの期のマグマ白亜紀の沈み込みによって汚染された上部マントル物質をソ-スとしている結果と考えてよい.後期古第三紀ー前・中期中新世の火成活動は非アルカリ岩系列を主とするユニモ-ダルな活動で特徴づけられるが,多量のアルカリ岩の活動が見られない点で大陸性リフト帯の活動と異なり,またバイモ-ダル火成活動を特徴とする大陸地域張力場火成活動とも異なる. 以上の成果は現在,公表論文として準備されつつある.
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