研究概要 |
海洋地質学的諸資料の体系的整理,平成元年積度観測事業と平成2年度補足調査による諸資料の解析を行なった。(1)海底微地形調査結果より詳細な海底地形図を作成した。地すべりに典型的な馬蹄形凹地を認め,分布形態や地形的特徴を明らかとした。(2)表層堆養物構造解析を行い,凹地が約100mの地層の欠落,すなわち地すべりの結果である事を明かにした。また斜面上に地すべりの先駆的現象(クリ-プ)を広域に確認し,再び滑落する可能性を示した。(3)音波探査記録解析より,海底地質構造や発達過程を検討した。石花海堆は第四紀の基盤隆起運動により上昇し,原初斜面が形成される。基盤上昇は新しい海底谷を北堆基部沿いに形成し,海侵食が行なわれる。斜面基部での侵食は,さらに不安定な急崖を形成する。歴史地震の一つが海底地すべりのトリガ-となり,土石流は海底谷軸を通じ北域の海盆域に運搬された。(4)採泥資料の堆積学的研究により、堆積物の流動、堆積作用のメカニズムの検討を行なった。本域では平隠な連続した堆積環境を示す地層(地すべり周辺域),試料上部に岩相の不連続を含む地層(地すべり域),乱堆積構造を特徴とした地層(地すべり末端域)などの堆積域区分が可能である。また,地すべり前面に分布する海底の高まりの起源について検討した結果,現地性堆積物であり,モデルに対しての新たな制約となる。(5)石花海堆上に分布する 層の起源についての研究の結果,一部に安倍川系 が含まれている事が確認された。(6)採泥資料の古生物学的研究(花粉分析)を行ない,ST.10(周辺域)では,3帯(3000年以前,3000年ー中世,中世ー現在)の分帯が可能であり,ST.9(地すべり域)との対比より,地すべり期は中世以降である事が明らかとなった。(7)地すべり発生と津波発生機構との関係を計算機をによる数値計算より検討し,一定の条件下において津波の発生する可能性が指摘された。今後さらに,地すべりのモデル化を行い、海底地すべりと津波との関係,津波発生の予知的研究を行う予定である。
|