研究概要 |
現世および第四紀の深海底層水の指標のひとつである石灰質底生有孔虫Melonis属について検討した。 1.高知県沖・大東海嶺付近・小笠原諸島東方・シャツキ-ライズ付近の深海底より採取された柱状試料をもとに,更新世後期〜完新世の同属の形態解析を行った。また,それらの標本と現生標本およびヨ-ロッパの模式的標本をもとに,種内変異と種の分類と層位分布について検討した。その結果,以下の点が判明した。 柱状試料には、Melonis sphaeroides,Melonis affinis,Melonis sp.A,M.barleeanusが含まれる。M.sphaeroidesには寒流系の変種が認められる。また,これまで多くの研究者によって,M.parkeraeと呼ばれてきたものはM.nicobarensisに同定されるべきものである。しかし,これはM.barleeanusの1形態型である。 2.新生代化石種の時空分布を把握するため,国内各地より試料を採集し,化石群集の検討を行った。その結果,以下の各地よりMelonis属に同定される化石標本を得た。 北海道羽幌地域(上部始新統),同釧路地域(漸新統),青森県三戸地域(上部中新統),宮城県仙台周辺(中部中新統),千葉県房総地域(下部中新統ー下部更新統),神奈川県三浦半島地域(中部中新統ー下部更新統),富山県八尾地域(下部中新統),富山県氷見地域(下部中新統,上部鮮新統ー下部更新統),石川県能登地方(下部中新統),岐阜県瑞浪地域(下部中新統),高知県大野(下部更新統),宮崎県高鍋地域(上部鮮新統),沖縄県島尻(上部鮮新統)。これらの各地より得られた標本について,分類学的な概査を行った。
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