研究概要 |
九州の後期新生代の湖成層および内湾性堆積物から知られるフロ-ラは,中新世期の中山,鮮新世前期の平国,黒木,前期から後期の重平,後期の太田川,永野,大和,人吉,恒松および余,更新世前期の山之口,姶良,宝泉寺,前期からの中期の吉田,杖立および大山,中期の津森,芳野,野上および阿蘇野,えびの,中期から後期の新開,内竪,後期のAsoー3〜Asoー4間,飯野ー加久藤,更新世から完新世の島原海湾および有明粘土,内牧および別府湾のものに整理される。 これらのフロ-ラが示す当時の植生は現在の温帯上部のものから暖帯〜亜熱帯のものにおよび,その変化の多様性を示している。そこでこれらの変動の様子を数値的に求める試みを行った。Wolfe(1987)の年平均気温の推定方法に加えて,気候帯要素の温暖要素の割合の産出方法(長谷,1988)によって,上記各フロ-ラが示す年平均気温をより高い精度で求めた。その結果,九州では中新世後期から現在までに,年平均5℃前後から20℃に近い気温までの間の寒暖を繰り返し,植生が大きく変化した。 過去の沿岸域における環境の変化を解析する目的で,宮崎平野更新銃(通山浜層)について検討した。通山浜層が海進期の堆積物であること,生息領域の異なる4つの貝類群集が認められることが明らかになった。また,海成層については,宮崎県児湯郡新富町,高鍋町,西都市を中心とする地域の宮崎層群を取り上げ,宮崎層群から産出する乳遊性有孔虫を検討して,浮遊性有孔虫化石層序が設定された。さらにこの地域の最下部の地質時代が鮮新世であること,また最上部は更新世にはかからないことが明らかになった。
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