東北地方には後期白亜紀から新第三紀に生成した花コウ岩類とそれに関係してできたと考えられる金属鉱床が広く分布している。花コウ岩が鉱床を伴うか伴わないかという問題についての解答を得るための前段階として、東北地方のいくつかの花コウ岩について、野外調査を実施し、得られたサンプルについて顕微鏡観察・モ-ド測定と流体包有物の加熱冷却実験を行った。対象とした花コウ岩と結果は以下の通りである。 1.日正花コウ岩体(山形県最上郡):新第三紀の本岩体はCu・Pb・Znの鉱化作用を伴う。本岩体は石英閃緑岩と花コウ閃緑岩からなり、後者が前者を貫入している。花コウ閃緑岩は亜斑状で周囲は流紋岩と漸移しており浅所貫入と考えられる。花コウ閃緑岩中の石英中の流体包有物には、NaClの娘鉱物を含むものや、気/液比の大きく異なる2相包有物などが観察された。さらに塩濃度や均質化温度の測定結果から、花コウ閃緑岩に貫入に伴う石英の晶出時に沸騰現象が起こったことと、その時の流体は高塩濃度であったことが推察される。 2.早田花コウ岩体(山形県東田川郡朝日村):本岩体は白亜紀末から古第三紀初頭の活動で、Cu・Pb・Zn等の鉱化作用を伴っている。野外調査と顕微鏡観察の結果、岩体は比較的均質な中粒の花コウ閃緑岩であるが、岩体南部で角閃石が多く、北部では角閃石は少なくなりカリ長石が多くなる。すなわち岩体北部ほどより後期に冷却したかより上部の岩相であることを示しており、このことは岩体中部から北部に金属鉱床が多く胚胎していることと関係が深いと考えられる。現在流体包有物の観察を続行中である。 このほか宮古花コウ岩体・赤金花コウ岩体・堺の神花コウ岩体(いずれも岩手県)についての野外調査と顕微鏡観察を行った。これらの岩体についても流体包有物観察夜行っている。
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