研究概要 |
関東山地の三波川変成域は,泥質・砂質片岩の鉱物組合せの変化にもとづいて第1帯,第2帯,および第3帯に分帯できる。しかし分帯の境界は複雑で,鉱物変化だけでは確実には追跡し難い。一方本研究の結果,炭質物の石墨化度(G.D.)は温度の函数であり,ざくろ石ー緑泥石間のMgーFe分係数との間によい相関のあることが明らかとなった。そこで鉱物組合せの変化とG.D.の変化とを組合せ,分帯の基準を次のように定めることにより,複雑な境界を追跡することができた。第1帯:緑泥石,G.D.<27,第2帯:緑泥石+ざくろ石,G.D.28ー35,第3帯:緑泥石+ざくろ石+黒雲母および緑泥石+黒雲母,G.D.>36。 各帯の発達状況をみると,第1帯内に第2帯の薄い層状体が挟みこまれており,同様に第2帯には第1および第3帯の,第3帯には第2帯の層状体がみられる。そして,この地域の分帯構造は多数の層状体の累積から成っているものと推定される。さらに,たとえば第2帯と第3帯の接する部分で,第2帯のG.D.が第3帯にむかって下降していく場合さえ見出される。この場合第2ー第3帯の境界は温度上昇に対応したアイソグラッドではない。つまりこの地域の帯境界は変成作用時の温度構造が保存されたものではない。 本研究の結果を四国中央部三波川変成域のものと比較すると,次のような重要な違いが明かとなる:1)ざくろ石の出現温度は両地域でほば同じである(G.D.【similar or equal】28),2)黒雲母の出現温度は四国(G.D.【similar or equal】50)に比して関東山地では明かに低い(G.D.【similar or equal】36)。つまり関東山地では「ざくろ石帯」の温度幅が狭い。これらのことは,鉱物分帯上は差異のみとめられない両地域においても,変成作用時の物理条
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