研究概要 |
SuzuokiーEpstein(1976)や、Graham et al.(1984),私達の実験結果から、花崗岩が結晶してから,周辺に水(H_2O)が存在していたとしたら、その角閃石ー黒雲母のδDーX_<Fe>の値を測定すると,日本列島の多くの花崗岩のような特徴になるはずである。それはX_<Fe>が0.6以下であるときはSuzuokiーEpsteinの実験式[10^3lna_<MーW>=ー22.4×10^6T^<ー2>+26.3+(2X_<Ae>ー4X_<Mg>ー68X_<Fe>)]にほゞそったパタ-ンとなる。このような花崗岩の角閃石の含水量はほゞ化学量論的な量である。つまり日本列島のような島弧,変動帯の花崗岩の角閃石ー黒雲母のペアのδDーX_<Fe>は、まだかなり熱い条件で水も多かったことを示している。 しかし質状地に存在する質状地形成後に迸入したようなラパキビ花崗岩の角閃石ー黒雲母のδDーX_<Fe>図のパタ-ンは,日本列島のものと全く異っている。つまり、私達を含めた実験とは合わないのである。そのことはそれらの花崗岩がマントル、あるいは地殻の下部でマグマから形成され、それが地表へ近く上ってきても、質状地には水がほとんどない条件であったので、実験のような水と鉱物のD/Hの分配がおこらなかったせいであろう。そうするとマグマから直接に角閃石,黒雲母が結晶する時の,両鉱物とマグマの中のOHのD/H分配が異っていることになる。このことは大陸が形成していくときの水と岩石の条件を考える上で大変意義のある結果である。 だだ、私達の実験をはじめ,水と鉱物という時の両者の量比,鉱物のFeの含有量その他について、今後実験の検討をする必要があるとともにOHを含むマグマ(珪酸塩融体)から角閃石,黒雲母を晶出させて、それらのD/H分配を測定する実験方法を考え出すことが大事である。
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