研究概要 |
西南日本外帯の花こう岩類は中新世中期の花こう岩類で,2種類の大別される.即ち,Iータイプ及びSータイプの花こう岩類である.Iータイプの花こう岩類は外帯の北部,仏像線より北に分布し,Sータイプ花こう岩類は仏像線より南に分布すると言われてきた.花こう岩類の化学組成は太平洋側に向かって,K_2O,全Fe,ノルムのコランダムが増加し,Fe_2O_3/FeO*(全FeをFeOとしたもの)比が減少すると言われている.我々は主として紀伊半島脊梁部の大峯地域及び四国の高月山の中新世花こう岩類を調査・研究した.大峯地域では花こう岩類がん仏像線を挟んで南北約40kmにかけて分布する.ここでは仏像線がほぼIータイプとSータイプ花こう岩類の境になっている.Iータイプの花こう岩類の鉱物組合せの特徴は角閃石を含むことで,これに対して,Sータイプの花こう岩類は角閃石を含まず,場合によってはキン青石を含むのが,その特徴である。Iータイプの岩体ではAl_2O_3/(Na_2O+K_2O+CaO)モル比が0.86ー0.95である.これに対して,Sータイプの岩体では,このモル比が1.04ー1.25である.四国の高月山花こう岩体は仏像線の南約10kmに位置し,6km×6kmの規模の花こう岩体が白亜紀後期の下部四万十層群中に貫入している.岩体はその鉱物組合せ及び外観から,Bータイプ,WーCタイプ,及びWーAタイプに大別される.Bータイプの花こう岩類はー見黒色であるが,花こう閃緑岩でWータイプの花こう岩類中に0.5km×1kmの規模で分布し,大きい捕獲岩と考えられる産状を呈する.WーCとWーAタイプの野外における関係は不明である.高月山花こう岩体の特徴は一つの岩体中にIータイプ(BーおよびWーAタイプ)とSータイプ(WーCタイプ)の花こう岩類が産出することである。起源が異なると考えられるIーおよびSータイプの花こう岩類が一つの岩体を形成した原因を解明するのが今後の課題である.
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