研究概要 |
思春期における体形の変化を,(1)暦年齢に対する最大成長速度年齢,(2)生物学的時間軸としての骨成熟スコアに対する最大成長速度スコア,(3)多変量アロメトリ,によって検討した.被験者は1979〜1988年の『小城成長研究』の9,209人の小・中高等学校の児童・生徒である.解析項目はTW2RUSスコア,身長,体重,座高,下肢長,上肢長,肩幅,腰幅である.成長速度は個人ごとに単位RUSスコアあたり,年間あたりの増加量を算出し,中央値を求めた.これらの代表値を3次のBスプライン関数で平滑化して成長速度曲線を描き,思春期スパ-トでのピ-クRUSスコア、ピ-ク年齢を求めた. ピ-ク年齢は,男子では12.7〜13.3歳に現われ,その順序は腰幅<下肢長<上肢長<身重<座高<肩幅<体重であった.女子では9.9〜11.4歳にわたって現われ,その順序は下肢長<上肢長<肩幅<身長<座高<腰幅<体重であった.すなわち,男子の体形の形成パタンは下半身→上半身型であるが,女子にはこのような傾向はない. しかし,骨成熟軸では各項目のスパ-トのタイミングは全く異なった結果を示した.男子ではすべての項目は55〜56%の,女子では67〜68%の骨成熟の時点で一斉にスパ-トしており,項目間のスパ-トのタイミングの差異はない.すなわち,骨成熱軸でみると体形の変化はすくないことが分かった. 多変量アロメトリは自然対数に変換した測度から共分散行列を計算し,主成分分析での第1主成分をとる方法によった.座高,下肢長,上肢長,肩幅,腰幅は比成長率が一律ではなく,成長に伴うプロポ-ションの変化があることを示した.その変化の傾向は男子では,下肢長,上肢長,肩幅は優成長を示し;腰幅,座高は劣成長を示した.女子では,腰幅,上肢長は優成長を;下肢長はほぼ等成長を;肩幅,座高は劣成長を示した.
|