研究概要 |
生化学的手法を用いて鳥類の系統分類を再検討するのが本研究の目的である。生化学的手法とはアイソザイム変異の系統遺伝学解析であり、系統分類とは科間、属間,種間の類縁関係を調査することである。 鳥類種間の遺伝的距離をもとにVPGMA法を用いて系統樹を作成すると、本研究によって得られた結果は、大筋において従来の分類とよく一致した。本方法は鳥類の類縁関係を定量的にあらわすことができるので、科内の属,種間の関係を調べる上で有効である。シジュウカラ科とエナガ科との類縁は比較的近縁であることが従来から知られているが、本研究において両科間の遺伝学距離は0.965となり、鳥類の科間の平均値(0.722)よりも小さな値であった。本研究において始めて両科間の近縁の程度を定量的に示すことができた。 本方法にも限界のあることが分った。一つは非常に近縁の種間では、遺伝的変異を検出することができなかったことである。この問題を解決するには、実験個体数を増すことと、調査する酵素タンパクの種類を増すことが有効であろう。 もう一つの問題点は、科間の類縁というような高次のレベルに関して本研究で行ったミズナギドリ目3科15種の23遺伝子座による調査結果では、系統樹においてアホウドリ科がミズナギドリ科内に位置した。この2科は生能と行動から別の科であると考えられているので、本方法が科レベルの研究に適用できるか否かは、更に検討の余地がある。高次のレベルでの類縁を明らかにするには、系統を反映する変異性の少ないタンパク質を多く捜しだして研究をすすめることが、一つの解決方法であろう。
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